火力発電所の環境対策 32th-day
Commentary.
汽力発電(Steam Power Generation)で燃焼されたガスは、過熱器(Superheater)・再熱器(Reheater)・節炭器・空気予熱器で熱交換を行い、煙突から放出される。
燃焼ガスのばいじんが大気中に放出されないように、
煙道に静電気を利用した電気集塵装置を設置する。
節炭器とは、ボイラで燃焼する石炭を減らすための機械である。
火力発電所では、燃料の燃焼により、有害な窒素酸化物を排出する。
しかし、環境の保全のためには、この有害な物質が排出されないように抑制しなくてはならない。
その対策として、
- 燃焼域での酸素濃度を低くする。
- 燃焼温度を低くする。
- アンモニア接触還元法(Ammonia Catalytic Reduction Process)を用いる。
窒素酸化物を窒素と水蒸気に変えるという方法である。
Consideration.
節炭器は、名前の通り、石炭を節約する機械である。「熱」と名前に付くもの、または節炭器によって熱交換は行われる。
アンモニア接触還元法は、
*1
という化学反応により、有害な窒素酸化物は、窒素と水(水蒸気)に分けられる。
*1:各係数a,b,c,dは未定係数法などによって求める
汽力発電・内燃力発電・コンバインドサイクル発電 30th-day
Commentary.
汽力発電・内燃力発電(ガスタービン発電)・コンバインドサイクル発電の違い、分かりますか?汽力発電 : Steam Power Generation
水を蒸発させ、水蒸気でタービンを回す発電方式である。
水を燃焼して水蒸気にすることから、多くの冷却水を必要とする。
熱効率は決してよくない。
内燃力発電(ガスタービン発電) : Internal Combustion Power Generation
燃料を燃焼させることによって得られる化学エネルギーを使って、
内燃機関を回すことによって発電する発電方式である。
空気を圧縮させたり膨張させたりするため、多くの空気を必要とし、排気量も多い。
しかし、冷却水はほとんど必要としない。
設備・運転は簡単であるが、
発電効率は20%〜30%とあまり高くない。
コンバインドサイクル発電 : Combined Cycle Generation
内燃力発電方式で排出された排気で汽力発電をおこなう方式である。
つまり、コンバインドサイクル発電 = 内燃力発電 + 汽力発電 である。
内燃力発電の損失である排気を汽力発電に活用することで発電効率の向上を狙ったものである。
高効率・局部停止可能・始動/停止容易・設備単純などメリットが多い。
一方、高窒素酸化物含有率・外気温度の影響・良質な燃料・騒音など、デメリットもある。
排熱回収方式コンバインドサイクル発電は、
空気が、圧縮され、燃焼し、膨張した空気によってタービンを回し、排熱回収ボイラへと流れる。
また、コージェネレーション発電という発電もある。
コージェネレーション発電 : Cogeneration Generation
英語から考えてみる。
Cogeneration = co(共同体) + generation(発電)
ということで、発電とともに何かをする方式である。
"何か"とは、発電に伴って発生する排ガスや冷却水の保有する熱を回収し、
給湯・冷暖房など民生用に利用することである。
これにより、送電損失軽減・電源立地問題解消・環境汚染軽減などの効果がある。
もちろん、効率もあがり、最大80%近くまで効率をあげることもできる。
汽力発電は、始動の遅さなどからベース供給力となりうる。
また、コンバインド発電は、頻繁に始動・停止ができ、ピーク供給力になりうる。
これについては、過去のエントリー
meriyasu-blog.hatenablog.com
を参照ください。
Consideration.
汽力発電と内燃力発電・コージェネレーション発電の比較が重要である。これらは、冷却水を必要とする点・効率が悪い点・効率の点などで違いがある。
言葉がややこしい場合は、英語で考えてみるのも手である。
汽力発電は英語で、Steam Power Generation。
つまり、水蒸気で動かす発電であることがわかる。
コージェネレーション発電(Cogeneration Generation)は、先ほども述べたが、
協力して発電する→発電だけでなく民生のためにも貢献する
といった意味合いがある。
公害防止 29th-day
Commentary.
大気汚染など、環境汚染を防止するための規定は、電気設備技術基準に定められている。
その電気設備技術基準は、電気事業法に規定されている。
電気事業法第1条
この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、
電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、
電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、
公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする
とあることからも、電気事業法に環境対策の記述があることがわかる。
環境問題から問題になるのは、ポリ塩化ビフェニルについてである。
第10条,第14条に次の記載がある。
中性点直接接地式電路に接続する変圧器を設置する箇所には、
絶縁油の構外への流出及び地下への浸透を防止するための措置が施されていなくてはならない
ポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油を使用する電気機械器具は、
電路に施設してはならない
電路の定義については、
meriyasu-blog.hatenablog.com
ここで説明しました。
電路とは、電気線全般のことをいう、つまり、
ポリ塩化ビフェニルはどこにおいても使用してはならないのである。
ポリ塩化ビフェニルの禁止を促す書類が、環境省・経済産業省から出ている。
http://www.safety-chugoku.meti.go.jp/denki/pcb/file/260221_PCB_leaflet.pdf
ここからもわかるように、
ポリ塩化ビフェニルが使用されている危険性のあるものは、
変圧器(トランス)・電力用コンデンサなどである。
ポリ塩化ビフェニルを含むこれらが、
発見・使用中・廃止・事故
の場合には、速やかに通達する義務がある。
Consideration.
電気事業法第1条は、重要である。ポリ塩化ビフェニルは、とにかく使用してはならず、すぐに報告する必要がある。
地絡遮断機の施設 28th-day
Commentary.
地絡事故が問題になることがよくありますが、地絡の何がいけないのでしょうか?
地絡とは、地絡点と大地が直結することをいいます。
大地に落ちるならいいのでは、と思うところですが、
大地には抵抗があり、場所によって、まちまちです。
地絡によって大地に大きな電位差が生まれると、
安全なはずの大地に電流が流れ、そこにいる人は感電してしまいます。
また、近くの健全な機器を破壊します。
このような理由で地絡は危険です。
そんな地絡事故を防ぐための遮断機というのが地絡遮断機です。
電技第15条 地絡に対する保護対策より、
地絡事故は、電気機械器具の損傷・感電・火災などをもたらす危険性がある。
そのため、地絡遮断機など適切な措置を必要とするが、
乾燥した土地など地絡の危険性がない場合は、この限りでない。
と定められている。
Consideration.
細かい規定はあるものの、今回は詳細まで知る必要はない(と感じる)地絡とはなにか、地絡によって引き起こされるケース、対策、除外ケース
などを覚えておくとよい。
過電流遮断機の施設 27th-day
Commentary.
今回は、低圧電路の過電流遮断機についてまとめる。低圧の分類については、以下のエントリーで確認してください。
meriyasu-blog.hatenablog.com
交流600V以下のことですね。
過電流遮断機には2種類あり、ヒューズと配線用遮断機がある。
ヒューズとは、一定の電流が流れた際に溶断し、接続を断つものである。*1
遮断機とは、一定の電流が流れた際に動作し、一時的に切断を断つものである。
これから示す数値は、電流値30A以下とする。
まず、ヒューズについて。
- 定格電流の1.1倍の電流に耐えること。
- 定格電流の1.6倍の電流が流れた際に60分以内に溶断すること。
- 定格電流の2倍の電流が流れた際に2分以内に溶断すること。
次に、遮断機について。
- 定格電流の1倍の電流に耐えること。
- 定格電流の1.25倍の電流が流れた際に60分以内に動作すること。
- 定格電流の2倍の電流が流れた際に2分以内に動作すること。
これらの区別方法については、考察にて。
Consideration.
ヒューズは一度きり、遮断機は何度でも使えるという点に注目する。ヒューズは一度きりなのだから、耐えるべき電流量(1.1倍)も60分以内に溶断する電流量(1.6倍)も大きい。
(そんなに頻繁に切れては困る)
遮断機は何度でも使えるのだから、耐えるべき電流量(1倍)も60分以内に遮断する電流量(1.25倍)も小さい。
(頻繁に切れても構わない)
すこし無理のある理屈かもしれませんが、
これを意識すると迷うことはないと思います。
気づけば、ブログ開設1周年です。
ご愛顧ありがとうございます!
*1:ただ、ポリスイッチなど、切断後復帰するものもある。(あれはヒューズなのだろうか??)
避雷器の施設 26th-day
Commentary.
避雷器の施設についてである。避雷器を接地しなくてはいけない条件が定められている。
- 架空電線路である。
- 特別高圧及び、500kW以上の高圧である。
- 発電所・変電所・配電用変圧器の高圧/特別高圧側
主にこれらの場合に接地する義務が発生する。
また、地中電線路では、すでに地中に接地状態であるので、
避雷器は必要ない。
避雷器は、高圧及び特別高圧の場所に施設するため、A種接地工事が必要となる。
A種接地工事は接地合成抵抗値が10Ω以下でなくてはならない。
しかし、合成抵抗値が緩和される条件もある。
接地極がB種接地極と1m以上離れている場合、30Ω以下でよい。
B種接地極と連接接地をおこなう場合、B種接地極抵抗65Ω以下で、
中間点の接地抵抗値との合成抵抗値が20Ω以下ならばよい。
B種接地の施設箇所以外の場合、A種接地極抵抗値65Ω以下で、
中間点の接地抵抗値との合成抵抗値が16Ω以下ならばよい。
なお、変圧器から300m以内にB種接地工事が施される場合、中間接地を省略できる。
Consideration.
避雷器は、地中には不必要で、架空には必要であることは、わかりやすい。抵抗値は、B種接地極と近い場合は、A種もしくは、B種接地抵抗値が65Ω以下で
共通であることを覚えておくと便利である。